グローバルなガイドラインを踏まえたCSR活動と報告のあり方

今年度のシリーズ勉強会は「グローバルなガイドラインを踏まえたCSR活動と報告のあり方」をテーマに、2011年6月から10月にかけて、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社新宿ビルにて、近年発行・改訂が相継ぐガイドラインの情報をいち早く捉え、報告のあり方について皆さまとともに学んでまいりました。

第1回「ISO26000と報告のあり方」2011年6月23日(木)

講演1:ISO26000と報告のあり方-ISO26000とCSRの新しいステージ
NPO法人サステナビリティ日本フォーラム 代表理事
後藤 敏彦(ごとう としひこ)

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講演2:ISO26000の企業での活用について-NECのケース
日本電気株式会社 CSR推進部長
鈴木 均 氏(すずき ひとし)

ISO26000をどのように理解し、その上で、これからのCSR活動と報告をどう描いていけばよいのか――。 ISO26000は異なる6つのセクターにより作られたことからステークホルダーエンゲージメントを「組織の社会的責任に関する活動の中心となる」と位置づけている。

鈴木氏からはISOが持つブランド力を活かし「社会、ステークホルダーの声を活用して事業を良くしていく」訴求力のある経営ツールとしての活用が可能という視点をいただいた。後藤は、ISO26000(原文)で記されているステークホルダーの定義について注目した。「ステークホルダー=組織の何らかの決定又は活動にan interestを持つ個人又はグループ」。原文と日本語訳とでは「an interest」と「利害関係」とで受け取れる印象が異なる。

CSR活動の棚卸しなど組織内への展開ツールとしてISO26000を活用
また、ISO26000を一言でいうと7つの中核主題と各主題の課題項目(イシュー)、アクション(400項目余り)からなる課題の集大成で、世界で取りざたされている問題を鳥瞰することができる。グローバル標準との比較で明らかになってくる自社の課題やレベルを社内の取り組み強化に向けたコンセンサスの醸成や理解促進に有効活用できるという実質的な提言がなされた。

キーセンテンス:ISOのブランド力を活かす、ISO26000は棚卸ツール、社内横断のCSR活動が必須

第2回「OECD多国籍企業行動指針改訂」2011年7月21日(木)

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講演1:OECD多国籍企業行動指針-改訂のポイント
外務省経済局 経済協力開発機構室長
清水 享 氏(しみず とおる)

講演2:原材料調達と企業
国際NGO FoE Japan 理事
満田 夏花 氏(みつた かんな)

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OECD多国籍企業行動指針の今回の改訂は、2000年以降の大改訂となった。主要な改訂は、(1)人権(2)デュー・ディリジェンスとサプライチェーン(3)各国連絡窓口(NCP)手続きの具体化(4)ステークホルダー関与の4つ。
課題への加担は、融資・投資にも関わってくる
NCPに入っている現在の相談事例は労使関係が多いが、サプライチェーンにおける責任が事業にどのようなリスクや機会を与えるのか、両氏の講演から得られたヒントは、何においてもデュー・ディリジェンスが必要という示唆であった。また、OECDの検討するプロアクティブ・アジェンダ(先行的課題)や法的な要素(米 金融規制改革法など)も含めた全体の流れの中で、企業はどう舵をきるのか、事業規模や影響力の観点からの決定が求められている。 質疑応答の中で、コーディネーターの後藤からOECD多国籍企業行動指針はISO26000を意識して改訂されていることもあるが、より企業に特化した期待が込められていると応えた。第1回勉強会と同様に、課題を自社でどれだけ深く認識して、それに対して自社はどのレベルまで取り組むのかという自社の決定がないままに取り組むと逆に落とし穴にはまる可能性があるという提言がなされた。

キーセンテンス:リスクに基づくデュー・ディリジェンスは悪影響を防止するための主要ツール、「落とし穴」にはまらない調査

第3回「Integrated Reportingフレームワーク」2011年10月4日(火)

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講演1:国際統合報告委員会(IIRC)での検討内容
公認会計士
森 洋一 氏(もり よういち)

講演2:KAITEKIの実現に向けた非財務情報の経営指標化
株式会社三菱ケミカルホールディングス 経営戦略室部長
濱田 栄一 氏(はまだ えいいち)

レポーティングの新しい動きとして、注目されている統合報告。財務情報と非財務情報の統合が目指すものとは何か――。濱田氏からは非財務の視点を経営に織り込もうという試みが、アニュアルレポートへの現れとのお話をいただいた。統合報告の協議文書に関し「新興国に経済的な比重が移っていく、あるいは人口の増加がある。その一方で、環境面・資源面での制約が顕著になってきている。その中で市場が自立的に動きながら制約条件にうまくソフトランディングしていく形で対処していかなければならない。そのためには企業のビジネスモデルが変わっていかなければならないし、そこでの報告も変化していかなければならない。」森氏から世の中の変化から報告も変わる必要性があるとの説明がなされた。
我が社は社会にどういう価値を提供していくかのが明確に問われている
どういう環境の下で・どういう責任の下で・どういう経営をしていこうとしているのか、企業の体制・目標設定・パフォーマンスにどう反映させているのか、経営者のコミットメントの重要性が提言された。

キーセンテンス:経営に新機軸を追加、中長期の企業の発展の後押し

毎回、40名前後の皆様にご参加いただき、高い関心が注がれる3つの国際規範、ISO26000・OECD多国籍企業行動指針・統合レポートの枠組みの中間報告について理解を深めてまいりました。いずれもこれからのCSR活動の方向性を示すもので、質疑応答の時間は、参加者の皆様の実務に沿った疑問を共有する重要な場になったと思われます。

サステナビリティ日本フォーラムは、マルチステークホルダーの皆様と連携をしながら、持続可能な社会実現を果たしていくことが大切であると考えています。

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