トップメッセージ

宮井 真千子(サステナビリティ日本フォーラム 会長)

「環境先進国日本」を再び目指して

宮井取締役

 日本がかつて環境先進国と言われていた時代があったことを今では忘れてしまいそうになります。日本は、明治以降の急激な産業の発展や、戦後の高度経済成長に伴って発生した様々な環境問題を、環境法制度の制定や環境技術の開発等によって克服してきました。世界でも貴重な経験を持つ国です。ところが最近の日本はどうでしょう。環境後進国といわれても仕方のないような、世界からの評価です。
 このような状況に陥ってしまった要因は様々あると思いますが、昨今の気候変動による災害をみても、もはや言い訳は許されない状況です。先日ニューヨークで開かれた「気候変動サミット」でのスウェーデンの環境活動家のグレタ・トゥンベリさんの抗議の声がとても印象的でした。「失敗したら許さない」「私たちは絶滅の淵にいる」まさに次世代の切実な声です。

 当会は、社会と企業の持続性を高めることを目的に、特に企業の活動に資するよう、有益な情報を届け、その活動をサポートしてきました。社会の持続性を高めるには企業の役割は極めて大きいと考えます。激変する社会からの要請に企業がどう応えていくべきなのか、企業がそれぞれの立場で何をなすべきなのか、持続可能な社会の実現に向けて、フォーラムとしては、会員企業のより一層のお役に立てるよう、取り組んで参りたいと思います。
 「もったいないを知り、ありがたいを悟る」私が尊敬する松下幸之助パナソニック創業者の言葉です。「企業は社会の公器である」ことを忘れず経営したいものです。

プロフィール

宮井 真千子(みやい まちこ)森永製菓株式会社 取締役常務執行役員
1983年 松下電器産業株式会社(現パナソニック)入社。
生活家電の開発に携わり、女性初の事業部長として、調理器事業のグローバル責任者となる。
本社に異動後、パナソニックグループ全体の環境政策を担当するようになり、
女性初の役員、環境本部長としてパナソニックグループの環境政策を担う立場となる。
森永製菓(株)、吉野家ホールディングス、加藤産業(株)の社外取締役、内閣府外局 個人情報保護委員会委員、和歌山県産業技術戦略会議委員や大阪市立大学の非常勤講師も歴任。
2006年、日経ウーマン「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2007」総合2位  
2012年、関西財界セミナー賞2012 輝く女性賞 受賞
◆パナソニックでは、女性初の事業部長、役員として、ダイバーシティの活動にも取り組み社外での講演多数。
◆パナソニック環境本部長時代には、パナソニックグループの環境活動を推進する一方で、業界での環境活動にも取り組む。(JEITA、JEMA、日本機械輸出組合の環境活動)

後藤 敏彦(サステナビリティ日本フォーラム 代表理事)

パラダイム・シフト

後藤敏彦

 人類社会は2015年にパラダイム・シフトを起動させました。持続可能な開発のためのアジェンダ2030(SDGs)とパリ協定です。近代始まって以来のパラダイム「進歩」、「成長」は暗黙の裡に地球資源の無限を前提にした錯覚でした。
 新しいパラダイムは有限を前提にした「持続可能な発展」です。メジャー・メタルは鉄を除きあと10~30年で殆ど堀尽くし、CO2やプラスチックごみは排出不可という制約条件です。循環社会、脱炭素社会を構築し人類活動をプラネタリー・バウンダリー内に収める形での社会経済システムの構築が必達のゴールです。

 私が中心になって当会で2018年に翻訳した金融安定理事会(FSB)のタスクフォース(TCFD, Task Force on Climate-related Financial Disclosure)の勧告について多くの日本企業が支持を表明し、経産省・環境省・金融庁がバックについて「TCFDコンソーシアム」も結成されたと報ぜられています。グリーンウォッシュならぬTCFDウォッシュと揶揄する向きもいますが、私は組しません。日本の上場企業の7割弱が5年程度の中期目標と称する計画しか持ち合わせておらず、これではパラダイム・シフトに合わせたイノベーション(新結合、創造的破壊)は期待できません。
 日本企業がTCFDを支持することで中長期のビジョン、戦略の策定を期待するところ大です。この場合、TCFD、SDGs対応、企業の中長期発展戦略が一体化していることが重要です。シナリオプランニング・シナリオ分析の研鑽を皆様と進めたいと考えています。

プロフィール

後藤 敏彦(ごとう としひこ)サステナビリティ日本フォーラム代表理事
環境監査研究会代表幹事、認定NPO環境経営学会会長、NPO日本サステナブル投資フォーラム理事・最高顧問、
(一社)グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン理事、NPOアースウォッチジャパン理事、
(一社)環境パートナーシップ会議理事、地球システム・倫理学会常任理事、
サステナビリティ・コミュニケーションネットワーク協働代表幹事、
(一社)レジリエンスジャパン推進協議会理事など。
これまで、GRI理事、ISO環境管理規格審議委員会EPE小委員会委員/エキスパート、
環境省/情報開示基盤整備事業WG座長、日中韓環境大臣会合(TEMM)付設日中韓環境産業円卓会合(TREB)団長、
環境レポート大賞審査委員会委員、国土交通省交通政策審議会環境部会委員、などを務めてきている。
東京大学法学部卒業。
著書に「環境監査入門」(共著)ほか、講演多数。

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