GRIスタンダード翻訳お披露目シンポジウム2017 ‘サステナビリティと情報開示の可能性’のその先へ 報告
2016年、GRIは第4版までのガイドラインの形式からスタンダードに衣替えをいたしました。欧州等での非財務情報開示の義務化や全世界でのESG投資のメインストリーム化を背景に、この流れは後戻りすることはないと言われています。社会と企業の持続性を高めるための非財務情報開示が企業にとっての規定ルールとなってきたことを改めて、認識するとともにサステナビリティ日本フォーラムが主体となって実施したGRIスタンダード翻訳のお披露目の会として、2017年のシンポジウムを開催いたしました。
定員300名の会場は熱気に溢れ、9割の方に高評価をいただいた
※プログラム、登壇者プロフィール、Sus-FJ代表理事後藤敏彦の講演資料を公開しています。
会員の皆様は会員専用ページよりすべての講演資料をご覧いただけます。
ビデオメッセージ CEO, GRI Timothy J Mohin 氏
基調講演1 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)
市場運用部次長 兼 スチュワードシップ推進課長 小森 博司 氏
「インベストメントチェーンにおけるWin-Win 環境の構築を目指して
~スチュワードシップ責任とESG の観点から~」
基調講演2 Director of Standards, GRI Bastian Buck 氏
「Introducing the GRI Standards」
基調講演3 ロイドレジスタージャパン株式会社 取締役 事業開発部門長 冨田 秀実 氏
「GRI スタンダードでの重要な概念とその⽇本語訳について」
パネルディスカッション
パネリスト:(五十音順)
・後藤 敏彦(サステナビリティ日本フォーラム 代表理事)
「日本における情報開示基盤整備と環境報告ガイドライン改定に向けた調査・研究」
・冨田 秀実 氏(ロイドレジスタージャパン株式会社 取締役 事業開発部門長)
・長村 政明 氏(東京海上ホールディングス㈱ 事業戦略部部長 兼 CSR 室長
東京海上日動火災保険㈱ 経営企画部部長 兼 CSR 室長)
「気候関連財務情報開示に関する国際的論議動向」
コーディネーター: 黒田 かをり 氏(一般財団法人CSO ネットワーク事務局長・理事)
パネルディスカッションでは、合計21件の質問を会場からいただきました。質問内容の内訳と特筆すべき議論を下記の通りご紹介いたします。
a、GRIスタンダードの準拠について 9件
b、GRIスタンダードの更新頻度について 3件
c、マテリアリティの特定方法 3件
d、他のフレームワークとの連携・関係性 5件
e、考え方や認識の浸透方法について 1件
Q、マテリアリティの特定方法について。横軸を「組織の経済・環境・社会に与えるインパクトの著しさ」と「自社の企業価値(向上)における重要性」としたときの違いは?
「自社の企業価値(向上)における重要性」は、今行っている取り組みを列挙する傾向にあるように感じる。前者はより中・長期的視点に立ち、課題になりうることに取り組むということになる。結果的に同じことになることも考えられる。
「自社の企業価値(向上)における重要性」の項目がプラスの項目であり、ビジネスオポチュニティであるのならば、測ることなく、ビジネスとしてどんどんなされば良いと思う。中・長期では、マイナスのインパクトを与え続ける企業が良い評価を得られることはないだろう。まず自社が環境・経済・社会にどういうインパクトを与えるのか、特にマイナスのインパクトを認識することが重要。
Q、将来、GRIスタンダードは法律と何らかの関連性を持つのか
日本では、財務情報と非財務情報の開示については、別個の様々な省庁が担当しているが、 ヨーロッパ(EU)などでは、非財務情報の開示は「財務情報の追加」になる。またEUの法律は原則主義。今回の改訂の背景にあるEU会計指令は、すでに9カ国で法律が施行され、そのうち7カ国がGRIスタンダードを引用しているとのこと。参考状況としてある話で、義務化ということではなく、参照レベルも様々である。グローバル視点で考えれば、拘束力の強いソフトローが事実上の規準となっている状況があり、法律だけ対応してれば良いといった考えではやや危険。
Q、様々なフレームワークの捉え方について
関心を寄せるプレイヤーが増えている。企業がどう対応すべきかについては、各々に一つずつの対応は考えにくく、対応すべきこととしては、義務的開示(有価証券報告書での開示など)と自主的開示がある。後者はアニュアルレポート、統合報告書、サステナビリティレポート、CSRレポートになる。そして3つめは、CDPやDJSIなどの回答要請に応えること。様々なフレームワークをどう理解して自社の報告にどのように落とし込んでいくのかといった整理になる。今後、10年を見据えると自主開示の内容が向上され、回答要請というものがなくなっていくことは考えられよう。コアになるようなGRIやCDPなど、その他多くとハーモナイズしている部分も大いにある。これらが参考になるだろう。
パネルディスカッションの内容から
パネルディスカッションでの議論は、これからのCSR活動の方向性を示すもので参加者の皆様の実務に沿った疑問を共有する重要な場になったと思われます。GRIスタンダード日本語版も発行となり、新しい企業メンバーの皆様との交流を深めながら、持続可能な社会に向けた取り組みを深化させていくことができればと考えています。 7月以降は、半額の年会費でSus-FJにご入会いただくことが可能ですので、この機会にぜひ、ご検討ください。
<ご入会の案内はこちらから>↓
https://www.sustainability-fj.org/nyukai/
サステナビリティ日本フォーラムは、マルチステークホルダーの皆様と連携をしながら、持続可能な社会実現を果たしていくことが大切であると考えています。
シンポジウムに対するご協力:
後援
環境省 経済産業省 グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン
会場提供
GRIスタンダードの翻訳に対するご協力:
協賛社
Platinumスポンサー
Goldスポンサー
Silverスポンサー
主催:
サステナビリティ日本フォーラムは、2017年で15周年を迎えます。