海士町での再生可能エネルギー取り組み

2013年3月27日
主催:NPO法人サステナビリティ日本フォーラム
協力:海士町役場 環境整備課

サステナビリティ日本フォーラム(以下、Sus-FJ)と島根県沖合い60kmの島 海士町(あまちょう)では、再生可能エネルギー自給に向けた取り組みについて、未来から現在のアクションを考える「バックキャスティング」法を応用して行っていますので、今回はこの取り組みについて、ご紹介します。

エネルギー庁のデータ(2009年)によると日本のエネルギー自給率は4%となっており、ほとんどのエネルギーを輸入に頼っています。世界をみても途上国・新興国の発展により、価格の上昇は避けられそうにありません。

もちろん、離島における持続可能性の問題は深刻です。こうした背景から、Sus-FJでは、シンポジウム「地域の発展と再生可能エネルギー」を2012年11月に開催。超少子高齢化や財政破綻の危機を乗り越えてきた秘訣や新しい価値観の見直しについて海士町の山内町長に語っていただき、たくさんの反響をいただきました。

シンポジウムでは、日本、そして離島からエネルギーを含めたこれからの持続可能な社会を構築するさまざまな提言がなされました。

さらに、Sus-FJでは海士町協力のもと、2030年のありたい姿をイメージし、絵にする七夕の短冊プロジェクトを実施。エネルギーは持続可能な社会を構築する上でも、重要なインフラですが、多様な利用者の理解を得ることが必要です。
「バックキャスティング」法は、ありたい姿をイメージし、目標に向けた最良の経路を考える思考法のひとつです。もちろん、不確実な未来に対して未来予測を行うのは、難しい側面もありますが、「将来、どんな町でありたいか」未来像をその町の住民が自ら描くことは重要です。

そこで、海士町の未来の担い手である小・中・高生総勢273名に「2030年の海士の未来への願いごと」を七夕にちなんで短冊に託してもらいました。「島」「自然」「暮らし」「仕事」、そして「家族」の5つのテーマで、361枚の短冊が集まり、「島の未来予想図」のイラストが完成しました。ここで描いたイメージをもとに、今後は具体的な行動計画を策定していきます。

2011年から2013年現時点までの経緯と成果

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2011年、Sus-FJの有志メンバー7名が「島の幸福論~海士ならではの笑顔の追及」という総合振興計画から、「世界一幸せな島」を合言葉に町興しに成功している海士町を訪れました。そこで、「2030年の島の未来を考えるワークショップ(テスト版)」(参加者20名)を実施。2012年より、環境経営学会とSus-FJの2つのNPOの協働で、行政が抱える経験不足を補い、新しいエネルギーシステムの未来社会を創造するにはどのような手順を踏むべきか、取り組み進めました。

短冊プロジェクトでは、「いえの前の海でおとうさんと魚つりをしたい」「海士町に大きな病院を建てて医者になってみんなを助けたい」「今と変わらず人と人とのつながりを大切にできる島であってほしい」といった、海士町に暮らす子供たちならではの願いが寄せられました。また、大きなショッピングモールがほしい、あるいはそのようなものはいらないといった相反する特徴的な願いもありました。大型ショッピングモールは、多種多様な商品を自由に選べるといった気分転換価値をもたらしますが、海士町では現実的ではありません。しかし、気分転換価値を別の形で創造することは可能です。
エネルギーを考える上では、単に使用しているエネルギーの代替だけを考えることだけでなく、現在・将来的な制約や、関係者(特に未来世代)とそのニーズを洗い出しが重要です。

今後の展望

現在・将来的な制約や、関係者とそのニーズの洗い出しを念頭に置きながら、持続可能な社会を日本全体でどうデザインしていくのか、関係者の協力を得ながら、今後も取り組みを進めます。スタートしたばかりの取り組みではありますが、自治体、地域主体の再生可能エネルギー自給の加速化に「バックキャスティング」法が有効活用であるとの想いから、これまでの海士町での取り組みを共有させていただきます。ご関心のある自治体ご関係者様、各地域でご活躍の皆様に、少しでもお役に立てば幸いです。

補足

海士町は、下記のようなことで昨今、注目を集めています。

  • 財政破綻への危機から、「若者」「馬鹿者」「よそ者」とともに日本の地域が直面するさまざまな課題に果敢に挑戦
  • 「人間力」を6つの要素16の力で定義した人間力マップを活かした教育の推進
  • 食料自給率 71.94%
  • 人口(約2300人)の1割以上のIターン者

A.海士町のロケーション

海士町は島根半島の沖、日本海に浮かぶ隠岐の島のひとつです。

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B.再生可能エネルギー自給に向けた取り組みの実施体制

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C.2つのNPOとの協働取り組みの一覧

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