平成24年度報告

1.事業報告にあたって

サステナビリティ日本フォーラムにおける(以下、「本会」と呼ぶ)年々充実度の高まる様々な活動は、98会員(平成24年12月現在)からの会費収入及び多岐にわたるご支援と、12名の運営委員による無償の活動、16名の役員と22名の評議員の皆様のご支援とご協力によって成り立っている。また、今年度は、平成14年の活動開始から10年目の節目の年となった。

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平成24年度は、CSRの分野では、ISO26000を棚卸しツールとして活用し、経営とCSRの一体化を図る動きが一部にみられたのがひとつの特徴であった。CSRをコンプライアンスや社会貢献といった守りの考え方でなく、戦略的なもの、実務そのものと捉える企業が増えていることが大変心強い変化である。企業価値を高めると同時に、事業機会の創出につなげるためにも、取り組み範囲を広げる企業(アクター)にとって、本会は今後も、海図なき世界の港と羅針盤の役割を果たしていきたい。

2.事業報告

企業のCSR活動を啓発・促進する事業

【勉強会】

1.シリーズ勉強会「世界のCSRガイドラインと企業のエンゲージメント事例」(3回シリーズ。1~3回までののべ参加者数97名)

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ISO26000など国際的な枠組みにおいて参考となる事例からリスクと機会を捉えるため、勉強会を開催した。会場は、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社様のご厚意により、同社新宿ビル3F会議室内をご提供いただいた。

第1回「問われるこれからのグローバルな水戦略」:5月29日(火) 参加者31名(一般社団法人Water CSR JAPANとの共催)
講師:一般社団法人Water CSR JAPAN 大崎博之氏
   パタゴニア日本支社環境担当 篠健司氏

第2回「サプライチェーン取り組みに対するNGOキャンペーンにどう対応するか ~ロンドンオリンピックに向けたフェアプレー宣言~」:7月13日(金) 参加者30名
講師:ミズノ株式会社法務部 部長 高橋靖氏
   UIゼンセン同盟 国際局 局長 郷野晶子氏

第3回「知っておきたいアジアの人権・労働問題のツボ~デュー・ディリジェンス企業事例~」:9月5日(水)参加者36名
講師:社団法人アムネスティ・インターナショナル日本 事務局長 若林秀樹氏
   株式会社日立製作所 CSR本部CSR推進部 部長代理 牛島慶一氏

毎回30名程度の企業の方にご参加いただいた。関心の高い水、労働慣行、人権分野で、ステークホルダーエンゲージメントやデュー・ディリジェンスのプラクティスを共有することができ、CSR担当の初心者から管理者、海外事業担当者まで各々のニーズに応える勉強会を実施した。アンケートでは「DJSI(Dow Jones Sustainability Index)やCDP(Carbon Disclosure Project)等への回答の参考となった」、またCSR活動において「グローバル・アクターとしてのベースとなる考え方」、「’人権’と’人事部’の関係」についてヒントが得られたなどの反応をいただいた。また、参加者数は毎回30名程と堅調であったが、アンケートの回収率は平成22年から増加傾向にある。これは、講演+グループ・ディスカッションの形式が定着し、最後までご参加くださる方が増加したことによるものと思われる。講演内容を深堀できるグループ・ディスカッションの形式について「とても有意義な会だった」「他社さんの意見も聞けて参考になった」という声があり、後半の時間帯に、特に今後のCSR活動の方向性を掴むヒントがちりばめられていることが多いため、今後もこの形式を継続したい。

2.NGO勉強会「企業の競争力につながるNGOとのエンゲージメントとは」 参加者19名

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近年、世界各地で発生している短期間で大規模な被害をもたらす自然災害など、社会全体を取り巻く環境は大きく変化している。こうした状況の中で、社会が持続的であり続けるため、サプライチェーンの上流で著しい危機に瀕しているエリア、人にフォーカスし草の根レベルの課題に精通するNGOの戦略とその思いを知ることが第一のステップである。企業の競争力にもつながるNGOとの良きエンゲージメントを探るため、世界の現状にアンテナを張り、地域に根付いた細かな支援に長けている国際NGOの考えを共有する会を実施した。

日時:10月17日(水)17:30-20:00
講師:国際環境NGOグリーンピース・ジャパン 事務局長 佐藤潤一氏
   国際環境NGO FoE Japan 事務局長 三柴淳一氏

参加者からは「NGOの戦略の一端がわかった。誠実な対応が重要」などの反応をいただいた。また、グリーンピース・ジャパン佐藤氏からは、勉強会タイトルのひとつの回答として「目的をきちんと持って対応してほしい。社会にいい影響をもたらすであろう本業で解決したいことに一緒に取り組んでいきたい」とメッセージをいただいた。

3.CSR担当者のためのCSR基礎講座および特別編 CSRレポート作成勉強会

初心者向けの少人数制(6人まで)によるセミナーを実施。
日時:1月より12月までに全10回の実施、39名が参加
講師:サステナビリティ日本フォーラムアドバイザー 鎗野達男

特別編 CSRレポート作成勉強会(5月22日開催)は、4社6名が参加。講師として松尾敏行運営委員にもコメントをお願いした。
また、大手小売業メーカーより依頼を受け、CSR基礎講座出張編(11月21日)を開催。社内浸透のひとつとして講演形式での実施となり、44名のアンケート回答者からは、「良い(勉強になった)」との回答を9割いただいた。中でも「勉強になった。自分が思っていた「CSR」は間違っていた。」との回答を多く得た。

4.人権セミナー「グローバル企業のリスクと課題 ~グローバル社会の中での人権について考える~」(大和総研との共催) 参加者108名

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人権におけるリスクと企業評価について考察するセミナーを開催。資料としてラギー・レポート(国連文書)を配布し、正式な日本語版発行のお披露目会も兼ねたセミナーとして実施。
日時:3月15日(木)14:30-17:00
講師:財団法人国際労働財団 熊谷謙一氏、
   サステナビリティ日本フォーラム 後藤敏彦、
   大和総研株式会社 鈴木裕氏、
   同社 河口真理子氏、
   FTSE4Good政策委員会メンバー 荒井勝氏、寺中誠氏
参加費:無料(ラギー・レポート1冊進呈)

アンケート(回収率56%)の中で「自社の中でどの部門に働きかけることが自社の人権取り組みを進めることにつながりますか」という質問に対して、回答が多かった順番に調達部門、人事部門、経営層といったセクションが挙げられた。

5.OECDピュア/レビュー団との意見交換会 参加者26名

平成21年より意見交換等を通じて交流を図ってきた外務省OECD室の発案により、OECD多国籍企業行動指針改訂にあたり、訪日したOECDピュア/レビュー団(8カ国11名のOECD関係者)および5社の日本企業との対話が実現した。
日時:4月18日(水)14:30-17:00
参加国:ノルウェー・オランダ・イギリス・ドイツのOECD事務局やNCPより11名、日本からは外務省経済局経済協力開発機構室より3名が参加
http://www.oecd.org/daf/internationalinvestment/guidelinesformultinationalenterprises/JapaneseNCPReview.pdf
本会についてはP5、8、15、24、29で言及されている。

OECD多国籍企業行動指針改訂作業リーダーのRoel氏よりお話いただき、参加企業からは自社の取り組みについてお話いただいた。双方向対話となる充実した意見交換会となり、外務省OECD室からもお礼の言葉をいただき、盛会に終了することができた。参加企業からは、「ぜひ、OECDWacthの日本支部機能の役割を担ってほしい」など、グローバルの流れの中で情報のハブとしての本会の役割に期待する声をいただいた。

【ラウンドテーブル】

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CSR分野の重要なテーマについてラウンドテーブルを実施。

第1回「ナチュラル・ステップ 高見氏とのラウンドテーブル」:4月5日(木) 参加者10名
講師:ナチュラル・ステップ・ジャパン代表 高見幸子氏

第2回「Dow Jones Sustainability Indexの評価について Mr. Stefanを囲んでのラウンドテーブル」:4月10日(火) 参加者11名
講師:PricewaterhouseCoopers(PwC)スイス Stefan氏

【その他】

メールマガジン・ホームページ(会員専用を含む)を用い、サステナビリティに関する情報やセミナー情報の提供に努めた(メールマガジンは、全20回/会員メールマガジンは、全8回発行)。また、初の試みとして、現在ケニアに在住で前事務局員の杉本寛子氏(平成17年に国連職員としてナイロビに着任し、現在、BOPビジネスコンサルタントとして活躍)の発案により、アフリカ・ビジネス事情としてコラムの配信を行った(全4回)。

活動に対するニーズを把握するため、アンケートの活用も行い、平成25年度計画への反映に努めた。また、情報拡散のための広報のツールとしてシンポジウム告知用にフェイスブックの活用もはじめて行った。157人に「いいね」ボタンを押してもらい、今まで関わりの少なかった層への周知につなげた。

サステナビリティ社会構築に向けた調査・研究・支援事業

【地球環境基金助成事業「世界で一番幸せなサステナブルアイランド~再生可能エネルギー自給率100%を目指す島のビジョン策定プロジェクト~」】

平成23年のエコツアーで実施した島根県隠岐郡海士町長との対話、住民との島の未来を考えるワークショップ(テスト版)を契機に、島全体でありたい姿をイメージし、実現するためのビジョン策定の分野で助成金を受託。これまでに島のキーパーソンを招いてビジョン策定のノウハウ共有を実施。また、島の小・中・高273名を対象とした2030年の島の未来への願いを短冊に託して描いてもらう、島の未来予想図作成プロジェクトを行った。島の小・中・高273名から寄せられた願い事を回収し、分類・分析(分析ワークショップを海士町にて10月29日に実施)。分析結果を元に、海士の未来予想図の制作を開始した。平成25年度には住民へ海士の未来予想図を広くお伝えし、海士町をベストプラクティスとして他の自治体への発信・普及につなげる。
現地訪問2回と現地とのスカイプ会議をこれまでに7回実施。
実施期間:4月~平成25年3月

【環境経営学会「再生可能エネルギー研究委員会_海士町プロジェクト」支援】

環境経営学会の再生可能エネルギー研究委員会・海士町プロジェクトの技術・財源・実行主体を研究するフィージビリティスタディに現地との調整役として協力するため、月1回の会合ならびに勉強会に参加。5月6日~8日には、現地訪問に同行し、海士町側との今後の協力体制の確認と島の主要施設の見学を実施した。

【シンポジウム】

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シンポジウム「地域の発展と再生可能エネルギー」、ワークショップ「離島におけるエネルギー需給の課題」(環境経営学会との共催) 参加者延べ144名
再生可能エネルギー社会の実現について、文化的、社会的側面と合わせて、真の豊かさを問い直す地域での持続可能な取り組みに焦点を当てたシンポジウムを開催。
日時:11月20日(火)13:30-17:00、ワークショップ10:00-12:20
場所:東京大学(駒場リサーチキャンパス) 生産技術研究所
講演者:島根県隠岐郡海士町 町長 山内道雄氏 、バイオマス産業社会
    ネットワーク 理事長 泊みゆき氏、株式会社巡の環 代表取締役 阿部裕志氏、
    西武信用金庫 理事長 落合寛司氏、慶應義塾大学大学院 教授 小林光氏、
    サステナビリティ日本フォーラム 代表理事/環境経営学会 理事 後藤敏彦
パネルディスカッションコーディネーター:環境経営学会 理事 青木修三
助成:エコポイント事務局
後援:環境省、経済産業省、農林水産省

参加者からは「講演者それぞれが、自分事として取り組み、話している点が良かった。もっと多くの参加者に聞いてもらいたかった」などの反応をいただいた。

サステナビリティ・リポーティングの国際標準をめざすGRIガイドラインの普及・啓発事業

【ガイドラインの普及】

平成25年にGRIが発行予定のGRIガイドライン第4版の情報収集に努め、第2回パブリックコメント募集の周知に努めた。GRIは2498のパブリックコメントを受け付け、2013年5月に第4版を発行予定。
7月13日(金)日経BP社インタービュー対応
8月23日(木)経済人コー円卓会議主催
「GRI G4策定に関するパブリックコメントについてのWS」にてGRIコミュニケーション&ネットワークディレクター Marjolein氏と意見交換を実施。

また、普及のひとつとして、GRI「サステナビリティ・レポーティング・ガイドライン」(第3版)の正式名称で国立国会図書館に申請し、ISSNコードを取得。「エコほっとライン」のご協力を得て、全国300の市立、大学図書館にて閲覧可能となるよう、寄贈した。

サステナビリティ・リポーティングに関する研究を推進し、国内外へ提言・提案を行なう事業

【ラギー・レポート(国連文書)の発行】

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平成23年3月に発行され、同年6月第17回の国連人権理事会にて採択された「人権と多国籍企業及びその他の企業の問題に関する事務総長特別代表、ジョン・ラギーの報告書」を国連文書(日本語版)としてアジア・太平洋人権情報センターとの共訳で発行。発行物は、アジア・太平洋人権情報センターの企業と人権のページ(特設ページ)で閲覧が可能となり、本会のウェブサイトでも相互リンクを行った。国連文書としての発行のため、無料で広く一般に公表されている。本会とアジア・太平洋人権情報センターでは、人権の国際的枠組みの普及と理解に努めるため、5社からの企業協賛をいただき、印刷を行い、頒布に努めた。

協賛企業:味の素株式会社様、花王株式会社様、株式会社クレアン様、株式会社日本政策投資銀行様、株式会社日本製紙グループ本社様
頒布価格:250円/1冊(送料別)
頒布数:555冊

その他

【役員懇談会】

第1回「役員懇談会」:1月6日(金)(参加者数16名)
評議員 泊健守氏(イオン株式会社 グループ環境・社会貢献部長)より「イオンの震災復興支援のご紹介」についてご発表いただいた。

第2回「役員懇談会」:8月3日(金)(参加者数21名)
環境省のエネルギー供給に関する2013年以降の対策・施策に関する検討小委員会 座長代理を努めた評議員 倉阪秀史氏(千葉大学 法経学部 教授)よりご発表いただいた。

【認定NPO取得を目指した取り組み】

実績判定期間の2年目に据えた平成24年は、10口(1口/3,000円)の寄付金と匿名の寄付金(エコポイント)、国の助成金の受託や賛助会員移行の申し出があった。また、東京都生活文化局にて、申請書類の提出に際しての記入事項の確認を行った(12月21日)。平成25年に正式な申請を行っていく。

【他団体のセミナー、シンポジウム協力】

協力「グリーン・サプライチェーン・フォーラム~市民・企業の国境を越えたパートナーシップへ向けて~」:3月12日
主催:NPO法人東アジア環境情報発伝所

広報協力「子供未来とうきょうメッセ2011」:3月発行報告書にて広報協力団体として掲載
主催:子育て応援とうきょう会議 共催:東京都

後援「ブルーエコノミーに変えよう」:6月27日
主催:NPO法人ゼリ・ジャパン

以上

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