平成25年度報告
1.平成25年度 事業報告にあたって
サステナビリティ日本フォーラム(以下、「本会」と呼ぶ)における活動は、専従職員は1名で、102名の会員(平成25年12月現在)からの会費収入及び多岐にわたるご支援、並びに16名の役員、25名の評議員及び13名の運営委員のご協力によって成り立っている。昨年度は、設立10年の節目を迎え、今年度は、法人化から10年となり、組織強化のため認定NPO法人に向け仮申請を行うことができた。
平成25年は、世界的なCSRの潮流にも大きな変化が見られた。まずは、GRI(Global Reporting Initiative)がGRIガイドライン第4版(G4)を発行。続いて、IIRC(The International Integrated Reporting Council:国際統合報告評議会)がコンサルテーション・ドラフトを発行した。欧州委員会も4月に会計指令の修正案*を提出している。
これらの動きをにらみ、翻訳やG4マルチステークホルダー委員会への参画、勉強会の企画への反映など、CSR経営の新時代を迎えるための準備期間に充実した活動を行うことができた。
* 「一定の大会社およびグループによる非財務情報と多様性情報の開示についての閣僚理事会指令78/660//EECと83/349/EECを修正する欧州議会及び閣僚理事会指令の提案」 会員専用ページにて本会私訳版を公開
2.平成25年度 事業報告
企業のCSR活動を啓発・促進する事業
【勉強会】
1.シリーズ勉強会「バリューチェーンマネジメントで社会課題をどう解決するか」(5回シリーズ。1~5回までののべ参加者数157名)
各企業で広がるバリューチェーンマネジメントにおいて社会課題の解決を図る、Win-Winの取り組みについて勉強会を開催。主にCSRの国際動向、エシカル消費とCSRをテーマに、バリューチェーンでの競争力強化としての産地育成事業、紙を含む違法伐採木材製品、グローバルな人財活性策としてのダイバーシティについて考える勉強会を開催した。会場は、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社様のご厚意により、同社新宿ビル3F会議室内をご提供いただいた。
第1回 コミュニティ参画:4月22日(月) 参加者28名
講師:株式会社伊藤園 取締役 CSR推進部長 笹谷秀光氏
首都大学東京 都市政策コース 教授 奥 真美氏
第2回 人権・消費者課題:5月24日(金) 参加者28名
講師:特定非営利活動法人ACE 代表 岩附由香氏
森永製菓株式会社 菓子事業本部 菓子マーケティング部 チョコレートカテゴリー担当 八木 格氏
第3回 環境課題:6月14日(金) 参加者26名
講師:サステナビリティ日本フォーラム 会長 木内 孝
サステナビリティ日本フォーラム 代表理事 後藤敏彦
一般社団法人グリーンピース・ジャパン 事務局長 佐藤潤一氏
第4回 消費者課題「進化するCSR調達~ウォルマートの戦略~」:7月22日(月)参加者40名
講師:株式会社大和総研 主席研究員 河口真理子氏
合同会社西友/ウォルマート・ジャパン・ホールディングス合同会社 執行役員 シニアバイスプレジデント 「企業コミュニケーション部」担当 金山亮氏
合同会社西友 商品本部 MDストラテジー エシカル・ソーシング シニア リテールマーケット マネジャー Walmart International, Japan 高井清和氏
第5回 ガバナンス「グローバル時代の人材ポートフォリオ戦略~ダイバーシティの重要(日本GE株式会社、株式会社クレアンとの共催):9月9日(月) 参加者35名
講師:経済産業省 経済産業政策局 経済社会政策室 室長 坂本里和氏
アパショナータ,Inc. 代表 パク・スックチャ氏
日本GE株式会社 法務本部 ゼネラルカウンセル ニューヨーク州弁護士 タニグチ直子氏
平成22年度のシリーズ勉強会「ISO26000を読む会」開催以来、3年ぶり2回目のISO26000の中核課題に沿った企業事例中心の勉強会を開催した。ここ4年間で最も多い、開催回数、参加者数となった。回収率60%(第1~5回の平均値)のアンケート結果からは、(企業70%、一般15%、NPO/NGO7%、その他8%)多くの企業の方の参加を得たことが分かる。勉強会の内容について適切だったかどうか尋ねたところ、「適切」と「概ね適切」を合わせて、98%以上の回答を得た。勉強会の構成については「グループでのディスカッション、質疑応答の時間が長く、発表の内容だけでなく、様々なことが聞けて有意義」といった評価を得た。企画もさることながら、内容が一目でわかるようタイトルにも工夫をした第4回、第5回に参加者が集まったこともあり、次年度はこの点も踏まえ、より魅力的な勉強会を開催したい。
2.特別勉強会:ロングターム(長期思考)で考える「地球の破綻・21世紀版 成長の限界」を読む会
「2050年における自社のリスクシート」を作成し、参加者には安井先生の講演を聞きながら、自己採点いただき、グループごとに共有いただいた。バリューチェーンリスクへの回避策・低減策やビジネスモデルへの転換についてもアイディアを出し合い、安井先生にも専門家として的確なアドバイスをいただいた。 10月31日(木) 参加者19名
【講師】東京大学名誉教授、独立行政法人 製品評価技術基盤機構理事長 安井至氏
[モデレーター]サステナビリティ日本フォーラム 後藤敏彦
勉強会テーマの「ロングターム2020~2050年」については、短期指向の企業には関心が薄いようで、企業の方の参加が少なかったのが残念であった。一方で「リスクとコストが明確だと企業は動きやすい」という声もあり、リスク認知を目的とし、ロングタームで考える土台となる2020~2050年の超長期データを検討する研究会を次年度発足したい。また、勉強会終了後、企業会員から「2050年における自社のリスクシート」を活用したいとの申し出があった。
3.CSR担当者のためのCSR基礎講座およびCSR基礎講座 出張編
初心者向けの少人数制(6人まで)によるセミナーを今年度より2回連続講座で実施。
【開催】 パートⅠ・Ⅱ2日間の開催を1回として全4回実施。参加者21名
【講師】 サステナビリティ日本フォーラムアドバイザー 鎗野達男
回収率66%のアンケート結果から、内容について「適切」「概ね適切」を合わせて100%、講義に対する理解度について「良く理解できた」「理解できた」を合わせて100%の回答といずれも好評であった。時間配分については、「ちょうど良い」71%、「全体的に長い」29%との回答があった。また、出張編は2社より依頼を受け、少人数のゼミ形式と40名規模の講演形式を実施した。
4.CSR講座「社会貢献だけでないCSRとは」:7月4日(木)参加者4名
地域社会への貢献という観点から、港区エコプラザの事業の一環でCSR講座を受託した。港区に事業所を置く企業を対象にCSRへの取り組みがなぜ必要なのか、どのような方法で行われているのかについて理解を深める講座を実施した。参加者が4名(うち企業3名、一般1名)と残念な結果となった。港区エコプラザとしては、企業の方の利用を増やしたいという意図があったため、次年度も継続受託となれば、これまで交流のなかった港区で環境活動をしている事業者会議へのアドバイザーなども視野に入れ、改善したい。
【ラウンドテーブル】CSR分野の重要なテーマについてラウンドテーブルを実施。
マイケル・ポーター氏らが設立し、CSV(Creating Shard Value)を牽引しているアメリカの団体FSGよりJustin氏を囲んでのラウンドテーブルを実施した。
「FSG Justin氏を囲んでのラウンドテーブル」:7月19日(金) 参加者8名
【ワークショップ】人権ワークショップ(アジア・太平洋人権情報センター共催):2月28日(木) 参加者29名
平成23年9月に開催し好評をいただいた人権ワークショップ第二弾を開催。
【講師】 サステナビジョン 下田屋毅氏、アジア・太平洋人権情報センター 白石理氏
[モデレーター]サステナビリティ日本フォーラム 後藤敏彦
[ワークショップコーディネーター] アジア・太平洋人権情報センター 松岡秀紀氏
回収率66%のアンケート結果から、100%企業の方に参加いただき、満足度の高いワークショップを開催することができた。「これまで社内研修で学習してきた人権に偏りがあった理由が明確になり、勉強になった」という反応をいただき、企業の方に人権課題の本質について理解いただくことができた。
【その他/講師派遣】
UAゼンセン同盟主催「CSRシンポジウム」:11月7日(木)「世界的なCSRの動向―労働関係を中心にして」をテーマに本会代表理事 後藤敏彦が、UAゼンセン加盟組合役員および当該会社のCSR担当者、連合等労働関係団体、国際関係加盟協団体、経営者団体、業界団体等、全体で約100名程度を対象としたシンポジウムにて登壇。
サステナビリティ社会構築に向けた調査・研究・支援事業
【あま未来アイランドプロジェクト】
①地球環境基金助成事業「世界で一番幸せなサステナブルアイランド~再生可能エネルギー自給率100%を目指す島のビジョン策定プロジェクト~」
「再生可能エネルギー自給率100%の島」実現のため、ありたい姿を描くビジョン策定として、海士町の小中高生(273名)の想いを絵にする取り組みを実施。「広報海士」を通じて、住民へ「2030年の島の未来予想図」の完成を広くお伝えした(島内1200戸へ配布)。海士町をベストプラクティスとして、他の自治体・CSOへの発信・普及した。事業終了の3月末以降も海士町環境整備課の方が未来予想図を用いて、小学校で授業を行うなどの展開がある。
②環境経営学会「再生可能エネルギー研究委員会 海士町プロジェクト」支援
「ないものはない」と言える幸福度ナンバー1の島を目指し、海士町・巡の環・環境経営学会・本会が協働し、特に現状島外に依存している島のエネルギーの自立プロジェクトを平成24年より3年継続で実施。また、環境経営学会の再生可能エネルギー研究委員会(海士町プロジェクトの技術・財源・実行主体)が行うフィージビリティスタディに、現地との調整役として協力するため、月1回の会合に参加した。環境経営学会研究報告大会(5月25日)にて、子ども達と取り組んだ短冊プロジェクトの報告において、七夕にちなみ2030年への願いを託したビジョン策定についての成果報告を行った。
③セブン-イレブンみどりの基金助成「ユースが挑む、グローバルな再生可能エネルギープロジェクト」:平成25年4月~平成26年2月まで
サステナブルなリーダーシップ育成の一環として、スウェーデンのサステナブルアイランド「ゴットランド島」の中学生と海士町、島前高校生とのICT技術を活用した交流事業を実施。
サステナビリティ・リポーティングの国際標準をめざすGRIガイドラインの普及・啓発事業
【GRIガイドライン第4版(G4)】
持続可能な社会に向けて、企業の非財務情報開示に関する議論を深め、国内での普及啓発と国際的基準へのエンゲージメントを図ることを目的とし、発足したG4マルチステークホルダー委員会に参画。本会からは代表理事の後藤がアドバイザー、事務局長の薗田が委員として委員会に加わった。また、代表理事の後藤は有識者として、G4のピア・レビューに携わり、G4日本語暫定版を12月6日に発表した。当日は130名以上にご参加いただいた。
委員長 | 冨田秀実 | ロイド レジスター クオリティ アシュアランスリミテッドGRIテクニカル・アドバイザリー・コミッティー(TAC)メンバー |
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アドバイザー | 後藤敏彦 | 元GRIボードメンバー(1998年~2006年)サステナビリティ・コミュニケーション・ネットワーク代表幹事 特定非営利活動法人 サステナビリティ日本フォーラム 代表理事 |
メンバー | 関正雄 | 株式会社 損害保険ジャパン 理事 CSR統括部長 |
金井司 | 三井住友トラスト・ホールディングス株式会社 経営企画部CSR推進室長 | |
川北秀人 | IIHOE(人と組織と地球のための国際研究所) 代表 | |
石田寛 | 特定非営利活動法人 経済人コー円卓会議日本委員会(GRI-OS)専務理事兼事務局長 | |
薗田綾子 | 特定非営利活動法人 サステナビリティ日本フォーラム(GRI-OS) 事務局長、株式会社クレアン(GRI-OS) 代表取締役 | |
町井則雄 | 日本財団 経営支援グループ CSR企画推進チームリーダー、G4マルチステークホルダー委員会 事務局 | |
協力団体 | 経済産業省、環境省、株式会社日本取引所グループ、グローバル・コンパクト・ジャパン・ネットワーク |
日本財団が事務局となって月1回程度の会合を重ね、これまでに委員会発足説明会の開催(3月15日)、GRI国際会議への日本代表団の派遣(5月22~24日)、国際会議の報告セミナーへの協力(7月4日)、G4日本語版(暫定)発表記念セミナー(12月6日)を実施。正式版の無償ダウンロードは平成26年2月25日に公開された。
サステナビリティ・レポーティングに関する研究を推進し、国内外へ提言・提案を行なう事業
平成24年3月にアジア・太平洋人権情報センターとの共訳で、国連広報センターからの助言を受けて発行した「人権と多国籍企業及びその他の企業の問題に関する事務総長特別代表、ジョン・ラギーの報告書」の普及と理解促進に努めた。これまでの累計頒布数は574冊。国連広報センターでは、新しいURLにて公開されている。
その他
【役員懇談会】
第1回「役員懇談会」:1月9日(水) 参加者23名 評議員 黒瀬友佳子氏(帝人株式会社 CSR企画室 室長) より「帝人グループのポジティブアクション~ダイバーシティ・マネジメントの一環として~」、評議員 沖田憲文氏(味の素株式会社 CSR部 部長)より「持続可能な成長へのチャレンジ」 についてお話いただいた。
第2回「役員懇談会」:8月8日(木) 参加者23名 評議員 水口剛氏(高崎経済大学 経済学部 教授)より、ご著書「責任ある投資~資金の流れで未来を変える~」を基に、 著書で主張したかったこと(1.SRIから責任ある投資へ 2.なぜ責任ある投資をすべきなのか、3.公的年金を変えよう)とその先にある課題(1.金融のショートターミズム、2.倫理と規範)についてお話いただいた。
【認定NPO取得を目指した取り組み】
平成23年・24年度の実績にて仮認定の申請を行った。東京都からの結果を待ち、並行して、平成24年・25年度の実績にて本認定の申請書の作成を行う。
【インターン生受入れ】
アジアの留学生支援を行うアジア・コミュニティ・トラストの助成を受け、中国遼寧省出身で北海道大学修士1年生の受入れを実施した(8月中)。電話応対や資料の整理といった定常業務や役員懇談会などの季節業務に従事いただいた。また、調査の一環で2社にご協力をいただき、インタビューを実施した。本会初めての海外インターン生の受入れは、文化や言語の違いとどう向き合うか、短期間でいかにパフォーマンスを発揮いただくか、受入の体制を整えただけでは足りない課題が見えた取り組みとなった。
【広報・会員専用ページでの取り組み】
メールマガジン・ウェブサイトを用い、サステナビリティに関する情報やセミナー情報の提供に努めた(メールマガジン全18回発行、 読者数平成25年12月末現在1294名、会員メールマガジン全6回発行)。また、欧州の動きをにらみ、欧州委員会が4月に発表した会計指令の修正案(前述)に対する本会私訳版を会員専用ページに掲載した。
<本会ウェブサイト アクセスレビュー>
平成22年 | 平成23年 | 平成24年 | 平成25年 | |
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堅調であった訪問数が、ウェブサイトのリニューアルに伴い、3,000ほど減少した。理由としては、ウェブサイトの立ち上げからあった古いページを削除したため、検索サイトからのそれらへの流入が減少したためと考えられる。一方で、ウェブサイト(トップページ)のリニューアルを周知した平成25年10月10日に、ここ4年で一番訪問数が集中した。また、ページごとの平均滞在時間が延びており、詳しく見てくれる方が増え、リニューアルの効果があったといえる。過去ページについては、平成26年度中ごろまでに移行を完了させる予定。
<ページランキング 平成25(2013)年、平成22年から平成25年までの通算>
1~10位まで、人気の高かったページが上記の通りである。同じ項目が2回、ランキングしているのは、1つのページに対して異なる2つのURLが混在していたためである。この点については、リニューアルに伴い解消された。トップページに次ぎ、GRIについてのページに人気が集まっている。設立当初からのGRIに関する情報提供の取り組み成果といえる。
【他団体のセミナー、シンポジウム協力】
≪協力≫Daimler Sustainability Dialogue in Japan 2013「人材の多様性と企業経営」:7月3日
主催:ダイムラー日本株式会社
EcoDesign2014実行委員会への協力:~平成26年2月シンポジウム開催日まで
主催:特定非営利活動法人エコデザイン推進機構
「再生可能エネルギーと地域・離島の活性化」:12月14日 主催:NPO法人環境経営学会
≪広報協力≫「ものづくりの持続可能性:英国の現状と研究動向」:7月19日 主催:駐日英国大使館